創立四十五周年記念公演 甦る写し絵と影絵の世界

劇団みんわ座 創立四十五周年記念公演「甦る写し絵と影絵の世界」にご来場頂き心より御礼申し上げます。

2014年3月29日 東京芸術劇場シアターウエスト
主催 ■ 劇団みんわ座
PDFパンフレット

特別出演

  • 20140329p
  • 説教節政太夫
  • 設楽瞬山
  • アントニオ古賀
  • 中嶋 興
  • 草原真知子

演目

  • 「雨月物語」
  • 「だるま夜話」
  • 「対談 中嶋 興 × 草原真知子」
  • 「ギターで綴る日本の調べ」
  • 「勧進帳」

アンケートの紹介

お答え頂いたアンケートの中から一部をご紹介させていただきます。

  • 古賀先生のギターを弾く指がすごすぎて指ばかり見てしまいました。心が震えました。(40代女性)
  • 日本の伝統を目から耳から全身で感じました。又やって下さい。(50代女性)
  • 雨月物語の背景がすごくきれいでした。人形の細やかな動きが感情を表現していてすばらしい作品でした。(50代女性)
  • 江戸時代から連綿と続く日本の伝統芸能を堪能できました。鮮やかな色彩、淡い色彩、繊細な動きと、どれも心を揺り動かされました。(40代男性)
  • だるま夜話を観るのは2回目でしたが、滑稽さと映像美と語り手さんのプロ度が冴える作品ですね。(30代女性)
  • 写し絵の歴史や光源の開発などを面白く紹介して下さった写し絵トークも面白かった。(40代男性)

写し絵を誕生させた江戸の文化

山形 文雄
劇団みんわ座代表
写し絵師 薩摩駒花太夫


一八〇三年春、江戸は牛込神楽坂で上演の幕を揚げた「写し絵」は、これまで観たことも、聞いた事もない新しい芸能として江戸っ子を驚嘆させました。
江戸時代、貸本屋が流行していました。絵入りの読本です。その読本の人物が、薄暗い寄席に張られた和紙のスクリーンに浮かび上がり、義太夫節などの語りにあわせて軽妙な仕草で芝居を演じ、舞いもするというものでした。江戸っ子が初めてみる光学映像でした。
この時代、最新の技術として江戸でガラス細工が始まりました。これがあって、薄板ガラスやレンズ製造が可能になり、それを応用して投影器、「風呂」つくられました。
日本の光学映像は、最初からカラーです。浮世絵はすでに「錦絵」として絢爛たる彩色の時代であり、その彩色の技法は最初からとりいれられています。登場人物の所作は、歌舞伎や文楽の様式が参考になりました。
時代としては「からくり義右衛門」の「絡繰り」が評判を呼んだ時代です。このような時代を背景にした「写し絵」が、時代の「良いとこ取り」をしない筈がありません。最も特徴的なのが、投影器を桐材で作り、手に抱えて操作するという技法です。まるで「文楽の人形を操作するが如くに」手動と絡繰りで所作を演じました。投影器を手に抱えて映像を操作する芸能の技法は、今も世界に写し絵だけです。
失われた幻の芸能「江戸の写し絵」の海外公演は、ワークショップも含めて九カ国になりました。本稿にも文書を頂いた「エルキ・フータモ博士」が、ハリウッド・映画芸術科学アカデミーへ提出した企画で、二〇〇八年七月に、上演が実現しました。その上演で「写し絵」の、日本独特の映像の絡繰り仕掛けや技法が高く評価され、二〇一一年四月のシカゴ公演、十一月の国際交流基金派遣の東欧四カ国公演と続きました。
国内では二〇一一年中学二年生国語の副読本に明治図書、正進社の二社が写し絵を取り上げて、日本アニメの原点としての写し絵は、遅まきながらその存在の意義が評価されました。
影絵劇団として創立して以来、一般の学校公演、公益社団法人 日本児童青少年演劇協会の巡回事業、文化庁の体験事業、芸術文化振興基金事業の特別支援学校公演等に取り組んでまいりました。時代の影響をうけながら、苦しいことも多かったが、創立四十五周年を迎えることができました。今までに関わった多くの方々や今回の公演に関わった皆様に、感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

みんわ座は国際的な文化交流使節である

エルキ・フータモ(博士)
カリフォルニア大学ロサンゼルス校
デザイン・メディアアート学科及びフィルム・テレビジョン学科 教授


一度は絶滅しかけた幻燈の再興という近年の喜ばしい動きは、メディア考古学への関心の高まりを示すサインでもある。幻燈会の面白みの再発見は、デジタルなインターネット文化に対抗するものとしても歓迎されよう。みんわ座はこのような現象に大きな貢献をしてきた。生き生きとした写し絵の伝統を復興しただけでなく、西欧の幻燈から発して独自の領域に到達した日本の幻燈文化を世界各地での上演を通じて国際的に紹介し、異文化理解と交流に果たした役割は大きい。

翻訳 草原真知子
早稲田大学 文学学術院 文化構想学部教授

Erkki Huhtamo
Minwa-za - Ambassador of Cross-Cultural Understanding

The recent resurrection of the nearly extinct art of magic lantern projections is a delightful thing, and a sign of a growing media archaeological awareness. The rediscovered magic lantern show is a welcome counterforce to the digital on-line culture. Minwa-za has made a major contribution to this phenomenon. Not only has it revived the lively tradition of Utsushi-e. By touring around the world, it has introduced the Japanese magic lantern show - a very special cultural creation - to international audiences, contributing to cross-cultural understanding.
Erkki Huhtamo

PhD, Professor of Design Media Arts and Film, Television, and Digital Media
University of California Los Angeles

みんわ座の江戸の写し絵はすばらしい。

高畑 勲
アニメーション映画監督


日本は、十二世紀の絵巻物から江戸時代の絵本・草双紙類、そして百花繚乱の現代に至るまで、マンガ・アニメ的なるものが次々と生み出され、享受されてきた珍しい国であり、この写し絵もそのひとつである。マンガ・アニメ的とは、物語を“絵”で、生き生きと語るということだ。写真や絵をスクリーン上に投影できる舶来の幻灯機を知ったとき、芝居や見世物好きの江戸の人はそのままでは放っておかなかった。重く据えっぱなしの鉄製幻灯機を、軽く、熱に強い桐箱に作りかえて持ち運び可能にし、投影された人物を自由に移動させる。しかも絵彩色の種板を瞬時に切り替えることによって、人物に動きを与える。見世物や芝居が“絵”で出来る。しかも色付きで。まさに映画だ。こんなことは幻灯機を発明した西洋人は誰も考えなかった。ファンタスマゴリアにもからくりショーはあったが、人物の自在な動きはない。私は若い頃、かろうじて伝承されていた写し絵に触れ、大いに興味を引かれたけれど、山形文雄氏のもと、劇団みんわ座が再興してくれるまで、写し絵がこんなにも面白く展開できるとは思ってもみなかった。心底感嘆した。私は山形氏と座のみなさんのご努力と工夫に心から敬意を表さずにはいられない。
百聞は一見にしかず。ひとりでも多くの方がみんわ座の江戸の写し絵をご覧になり、すてきな見世物を楽しみながら、世界をも驚嘆させた先人の知恵を偲び、また日本のマンガ・アニメ的なるものの連綿たる伝統に思いをはせてくださることを願わずにはいられない。

みんわ座の影絵劇

石坂 慎二
公益社団法人 日本児童青少年演劇協会 事務局長


みんわ座の影絵劇の大きな特徴の一つは、その「余情性」にある。美しいのはもちろんではあるが、観劇後、しみじみとした味わいがいつまでも心に残るのだ。
『赤いろうそくと人魚』にしても、『とべないホタル』にしても、しっかりとした「ドラマ」の裏打ちがある。換言すれば、しっかりとした脚本があるから、美しい映像とともに、ストーリーが観客の心にいつまでも残るのだ。
私個人としては、『白いりゅう黒いりゅう』が好きだ。中国の民話をさねとうあきらさんが脚色している。さねとうさんらしく、大きな骨格の中にも詩的な味わいがある。すぐれた脚色である。
この作品の大きな特徴は、三面スクリーンの魅力もあるが、大きなりゅうがスクリーンから出てくるところにある。そのアイディア(演出)が良い。スクリーンの前での白いりゅうと黒いりゅうの闘いの場面では、思わず身を乗り出してしまう。私がそうだから、子どもたちが狂喜するのはあたりまえ。
みんわ座の影絵劇に期待する由縁である。

世界に誇る映像文化を楽しむ 「江戸の写し絵」の妙味

太田 博
ジャーナリスト


木製の幻灯機(「風呂」という)を巧みに操作して動画的な効果を生み出す「江戸の写し絵」は、二百年余りの歴史を誇る伝統芸能であると同時に、現在、我が国が世界に誇るアニメーション文化の原点でもある。
顔の表情、手足の動き、景色の移り変わりなどをガラス板に個々に描いた種板を「風呂」の中で素早く入れ替えたり、微妙な振動を加えるなどの操作をしながら投写する。それが残像機能を引き出してアニメーション効果を発生させ、その映像を、スクリーンの裏側から透写させて客に見せる。
十八世紀にオランダからやって来た金属製の幻灯機を木製の「風呂」に改良し、手持ちの映写機として自在に操る日本人特有の器用さと勤勉さで、世界でもまれな芸能、いや文化、芸術を作り上げた。これこそ、「世界文化遺産」といえよう。
江戸末期に大人気を博したが、明治中期、映画の普及で急速に廃れていった「写し絵」を復元、継承しているのが影絵劇団「みんわ座」(山形文雄代表)である。国内だけでなく、アメリカ、イギリスなどで公演活動を続け、特に映像関係の研究者からも関心を寄せられている。
現在、この貴重な芸能を一般向きに公演しているのは「みんわ座」だけである。熟練された妙味をぜひ観賞して欲しい。またそれ以上に、一つの芸能娯楽として楽しんでいただきたい。

雨月物語

雨月物語・浅芽が宿より
原作 ■ 上田秋成
脚本 ■ 山形文雄
演出 ■ 古谷直義
美術 ■ 片岡 昌

下総に住む勝四郎は、絹を商いに、妻を残して都に上って行った。時は戦国の荒れた時代で、せっかく絹を売って儲けた大金も追い剥ぎに盗られてしまい、あまつさえ、下総は戦乱で無人の地となったと聞いて、勝四郎は都に留まってしまったのだった。やがて都も戦乱の巷となって、勝四郎は古里へ帰っていくと、家の明りが見えるではないか。

だるま夜話

脚本・演出 ■ 山形文雄
美術 ■ 田中佑子

掛け軸に描かれた「だるま」が夜中に掛け軸から飛び出て・・・
江戸後期、庶民に人気を博した写し絵映像からくりの技法がさえた傑作。

対談 中嶋興 vs. 草原真知子

中嶋 興 ■ 映像作家・日本文化海外普及協会理事・ASIFA国際アニメーション協会会員
草原真知子 ■ 早稲田大学文学学術院教授・工学博士。メディアアート、映像文化史研究

江戸の写し絵に用いる幻燈機は「風呂」と呼ばれ、木製で軽く、手に持って動かすことができます。オランダから伝わった幻燈が日本の「紙と木の文化」や「語り物の伝統」と融合したのが写し絵です。和紙のスクリーンの背後で風呂を手に抱えて移動し、自在に映像を動かし、物語を演じるという写し絵の伝統は世界に誇れる文化遺産であり、映像史研究においても注目されています。
今回の対談は写し絵の起源、その装置の特色、さらに燈明からランプ、そして最新のLEDに至る光源の変遷について語り合い、日本のアニメーションの原点を探ります。

ギターで綴る日本の調べ

アントニオ古賀


『故郷』
 私たちの心のよりどころとなる故郷の歌をしみじみとお聞かせします。
『さくらさくら』
 日本の唄「さくらさくら」を多彩なギターテクニックで演奏します。邦楽との趣の違いをお楽しみ下さい。
『影を慕いて』
 日本の心のメロディー。古賀政男作曲のこの歌を、美しく情熱的に歌い上げます。アントニオ古賀の十八番です。
『その名はフジヤマ』
 一九八五年競演したラテンコーラスグループのトリオロス・パンチョスから送られ大ヒットした曲です。

勧進帳

潤色・演出 ■ 山形文雄
美術 ■ 田中佑子

源義経は兄、頼朝と不和になり、今では兄から追捕を受ける身になっていた。
義経は家来の弁慶達と山伏姿に身をやつして都を落ち、加賀の国安宅の関に差しかかった。関所では、関守冨樫左衛門が待ち構えていた。冨樫が弁慶に、怪しい一行かな、と問えば、弁慶は「勧進の山伏」と応える。しかし、冨樫は義経を見て、そこな者、手配の「似顔絵に似たり」と、冨樫が詰め寄ると弁慶は・・・